ポンコツCPU、@SHARP_JP です。大した頭も持ち合わせていないくせに、いつもなにかとなにかを同時にこなそうとしてしまう。ふたつの仕事。ふたつの企画。ふたつの原稿。どちらもうまく進捗できた試しなんかないし、結局は締め切りにより追われている方にかかりっきりになるのがオチだ。料理しながら洗濯とか、掃除しながら整頓、買い物しながら運動なども憧れるけど、どうせできない。どちらかでも達成できればまだマシだが、どちらも中途半端あるいはどちらも延々と終わらない場合すらある。
スペックの振るわないCPUになんだかんだと並行処理させたら動作が遅くなるどころか、うんともすんともいわなくなる。会社貸与のパソコンなんかでよく遭遇させられる光景だけど、あれもどこか自分を見るようで、悲しくなってしまう。世の中にすごいCPUが次々と開発されるように、すごい処理能力を持った人は身の回りにゴロゴロいる。働いているといったいどうやってと口をあんぐり開くばかりのマルチタスクを見せつけられることもあれば、SNSにはマルチタスクの効率やコツを伝授しようと誘う動画や煽りにあふれている。
とはいえ、できないものはできない。私には処理能力の限界があるのだ。もちろんできないことを憧れることは、できる未来の端緒ではあるけれど、できない自分を呪う暇があったら、ゆっくりひとつずつやればいいと、いまは至極まっとうな結論に落ち着いている。そろそろ、並行処理は諦めたい。ただでさえ私は、頭に浮かんだり目に映りこんでくる由無し事に、すぐ心ここにあらずになってしまうのだ。そういう私は、効率とかマルチタスクといった、かっこいいことに相性が悪いのだと思う。
勇者と姫(ミキメミ 著)
心ここにあらずの傾向は、会社のツイッター係をやるようになって加速してしまった。私のパソコンやスマホは常にツイッターが開かれている。すぐツイートできるようにというより、お客さんのリプライにできるだけ対応したいというのが理由だ。だから私は会議中も打ち合わせ中もツイッターをしている。ツイッターをしているように見えないようにツイッターをしている。
それはもはや職務上の要請とも言えるのだが、私はすっかりツイッターをしながら仕事することが板についてしまった。仕事中はナチュラルに、心ここにあらずなのである。失礼だろうと言われても困る。私にとって仕事とは、私がいまいる場所と、ツイッターの両方にあるのだ。だから少なくとも私の心は半分、私がいるここの仕事にない。
もちろん弊害はある。人の話は半分でしか聞けない。私はたいていどこかが欠落したまま、仕事の話を把握している。半裸のお姫様を前に心ここにあらずな、このマンガの勇者と同じである。ちゃんと聞いていないのは自分のせい(とも言い切れないのだが)と思うやましさもあるので、情報が欠落した部分を聞き返すこともはばかられる。だからマンガの勇者のように「是非〜」とかなんとか言って、いつもどうにか当たり障りのない返答でやり過ごしている。もちろん失敗して、怒られることもある。
ただし私は勇者ではない。世界を救う使命を帯びてもいなければ、困った姫を手助けする機会もない。勇者の聞き逃しは世界の大問題だけれど、私の聞き逃しはもっと瑣末なことだ。どうせ怒られたって、私には話半分しか聞こえないのだ。私にはここ以外に大事な仕事がある。だから私は、きょうも堂々と心あらずにいる。