シャープさんの寸評恐れ入りますめんどくさいの前倒し

ウェブトゥーン(縦スク漫画)のコミチ

生活してますか、@SHARP_JPです。日々はそれなりに楽しいけど、めんどくさいこともある。けっこうある。家事なんて、その典型だろう。自然のままに、怠惰のままに暮らしていると、エントロピーは増大する。それを食い止める唯一の手段が、家事だ。世界の崩壊に立ち向かうことは、めんどくささに立ち向かうことでもある。


そもそもめんどくさいことは、やらないと終わらないから、めんどくさい。逆に言えば、やれば終わるのだが、それでもやっぱりめんどくさい。掃除にしろ、洗濯にしろ、やれば必ず終わる。わかってはいるが、果てしなくめんどくさい。


しかも家事は時間が経つと、あれもやらなきゃこれもやらなきゃと層を成すから、どんどんめんどくさくなる。かくして生活は、楽しいの間にめんどくさいがサンドされ、タスクの塔と化す。そして私たちは、どこから手をつけていいかわからなくなって、途方に暮れるのだ。


これが仕事なら、少しは様相が異なるだろう。仕事とは、やらなければいけないことの集積だ。しかしその集積もよく見れば、めんどくさいこと、ちょっとめんどくさいこと、どちらかというと楽なこと、むしろ楽しいことなど、タスクはさまざまなグラデーションを描いている。


だから仕事なら「めんどくさいことは先に済ます」という解法があるのだ。やれば終わるのだから、めんどくさいことは先にやる。そうすればあとの時間を、いささかなりとも心地よく過ごすことができる。仕事の場合、私たちはそういう見通しが立てられる。


だが家事はそうもいかない。家事は先に済ますことができないのだ。めんどくさいからといって、食べる前に食器は洗えないし、散らかる前に掃除はできない。汚れる前に先だって洗濯はできないし、あらかじめアイロンしたからといって、今日着る洋服にシワが減るわけでもない。


家事は前倒しができないのだ。われわれにできるのは、目をつむって先送りすることだけ。ああ、めんどくさい。


1にち1まんが置き場(ayn 著) 


漫画を読んで共感する人も多いだろう。お風呂はめんどくさい(時がある)し、あがった後の髪を乾かすのはもっとめんどくさい。だからといって、お風呂の前に髪を乾かすことはできない。めんどくさいを前倒すという、せっかくポジティブになろうとする行為すら、お風呂というタスクは許さないのだ。


もちろんここから私は、速乾ドライヤーの存在へと話を接続することもできる。私の勤める会社は、そういうドライヤーを扱っている。むしろ私は、そうすることが本業だろう。だが、めんどくさい。


家電とは家事のめんどくささを低減することこそ、存在意義だと言っていいと思う。髪を乾かすというめんどくさい時間も、最近のドライヤーなら大幅に短縮することはできるだろう。それはまちがいない。しかし、めんどくささはゼロにはならない。なぜならめんどくささとは、初速に比重があるのだ。重い腰をあげる時こそ、私たちはアシストがほしい。そこに家電はどこまで寄り添うことができるか。


そう書き継いだものの、私は流しにうず高く積もった食器を前にめんどくさくなり、考えるのをやめた。生活は、めんどくささに溢れている。